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院長コラム

Director's column

インフルエンザ脳症について教えてください 戸塚内科小児科医院の瀧川です。今シーズン、インフルエンザが大流行し過去10年間で2番目となるほどでした。またインフルエンザ脳症にかかった方が160人を超えたということです。このインフルエンザ脳症というのは非常に重篤な病気で、昨年県内でインフルエンザ脳症により脳死状態となった6歳の女の子さんが、ご両親の尊い決断のもと、臓器提供をなさいました。これにより3人の方々に移植手術ができました。ご冥福をお祈りするとともに、尊い決断をされたご両親に対しては本当に頭が下がるのみです。インフルエンザ脳症はインフルエンザの感染が引き金となり、免疫の暴走が始まり、脳に炎症が広がった結果、意識障害やけいれん、神経の障害などが生じる病気です。この病気の特徴は、インフルエンザの感染はあくまでもきっかけであり、その後の免疫の暴走はインフルエンザのウイルスとは関係なく進行し、脳に直接ダメージを及ぼし、最悪の場合、死に至ります。予防接種で脳症防げるかどうかは議論が分かれますが、重症化を防ぐには毎年予防接種をした方が良いですし、状況によっては死に至る病気だということを知っていてください。

こむら返りについて教えてください こむら返りとは筋肉の痙攣による痛みのことを指します。筋肉の痙攣はしゃっくりなどがよく知られていますが、こむら返りはふくらはぎの筋肉に生じる痙攣のことで、痛みを伴いますが、筋肉痛とは違い、痙攣そのものは数分以内で収まります。こむら返りは運動中や睡眠時に起こりやすく、また加齢とともに発生が増加する傾向にあります。原因としては足の筋肉の血流の悪化に伴うミネラルバランスの悪化が指摘されています。この場合ミネラルとはカリウムやカルシウム、マグネシウムなどを指します。これらが不足するとふくらはぎの筋肉に過度の収縮が起こりやすくなり、その結果こむら返りという筋肉の痙攣となって表れます。こむら返りの予防法としては、足の筋肉を伸ばすストレッチや足を冷やさないように保温することが勧められています。また、もしこむら返りが起きた場合はゆっくり足を伸ばすようにすることが大切です。質問者の方の場合も座っているままの仕事中に起こるということなので、足の筋肉の血流の悪化が主な原因と考えられます。そのため足の筋肉をほぐすように、一定時間ごとに足のストレッチを行う、あるいはソックスなどによる足の保温を心がけたら良いと思います。また薬物療法としては筋肉の緊張をほぐすような薬が使われます。ダントリウムや芍薬甘草湯が主なものです。ただ女性の方の場合、更に気をつけていただきたい点があります。女性の方に多い症状の一つに手足の冷えがあります。これは女性ホルモンに由来する末梢循環不全が原因です。そのため手足の冷えを強く自覚されているようであれば、末梢循環不全を軽減させる治療もあわせて行った方が良いと思われます。特に静脈系の循環不全では下肢静脈瘤が生じることがあり、まれではありますがこむら返りの原因の一つに挙げられています。この場合気づかないうちに下肢静脈瘤が形成されていることがありますので、運動時や睡眠時以外に起こる場合、すなわち足の循環不全について思いあたるような場合がないときは受診することをお勧めします。

インフルエンザ予防接種をするか迷っています 戸塚内科小児科医院の瀧川です。最近、急激に気温が低下したため体調を崩す方が多いようです。高齢で活動量が少ない方は風邪くらいと思わずに十分注意してください。気温が低下すると筋肉のしなやかさが減少し転倒しやすくなりますが、この際筋肉を痛めたり骨折したりすることがあります。また、わずかな発熱でも脱水となり入院が必要となることがあります。このような、いわば負の連鎖はきっかけが小さな事でも結果として生活に支障を来すほど重大となることがあり、私も今シーズン何回も経験しました。これは子供であっても同じ事であり、かぜが喘息発作の引き金となるので、やはり十分に気をつけた方が良いのはいうまでもありません。最近医療を否定するような報道を目にしますが、先日もある小児科の医師がインフルエンザの予防接種は効果が低く無用であるというような発言をしており、非常に驚きました。私は予防接種が全員に必要とは思いませんが、体力的に衰えている方や持病をもっている方には積極的に接種してもらいたいと思っています。この記事を見ると接種が必要な方も不要と受け取りかねない内容であり、非常に違和感を覚えます。

先日、洞不全症候群と診断されました。 心臓はからだのすみずみまで血液を送り出すポンプの役割をしています。心臓の収縮する回数を心拍数といいますが、日中の安静時では1分間に60~100回が目安です。運動している場合は120回以上になりますし、夜間就眠中には40回くらいまで下がります。つまり心臓は心拍数を増減させることで全身に送る血液の量をコントロールしています。心拍数は自律神経、すなわち興奮時に活性化する交感神経と安静時に優位となる迷走神経(副 交感神経)のバランスによって制御されています。心臓の筋肉の収縮は微弱な電流による刺激によって起こります。この微弱な電流のおおもとは洞結節という部分であり、洞不全症候群は何らかの原因によって洞結節の機能が低下し交感神経から刺激を受けても心拍数が40回程度の徐脈となります。また何秒間か洞結節が全く作動しないこともあり、この場合脳への血流が低下し、めまいや失神発作が生じます。原因は洞結節の加齢が多いとされますが、先天性の心臓病の手術を受けた後に出現することもしばしばあります。治療法は徐脈でも交感神経の刺激に反応し心拍数が上がれば無治療で経過観察となりますが、それ以外はペースメーカーの植え込みしかありません。脈を速くする薬の内服は必要に応じて心拍数をコントロールできないため行われません。現在のペースメーカーは非常に発達しており、電磁波に対する対策も十分とられています。ただペースメーカーの欠点は電池の寿命があることで、6~8年から12年程度で交換しなければなりません。ペースメーカーは通常左胸の鎖骨の下に本体を植え込み2本のリード線を右心房と右心室に留置させます。合併症としてはリード線の断線などがありますが、異物をからだにいれるため虫歯などの感染症を最も気を付けなければいけません。今回のご相談の方は5歳と幼いためペースメーカーの入れ替えを何度も経験することになりますが、ペースメーカーを挿入しない場合は運動制限が生じますが、挿入により成長し運動量が多くなるのを助けてくれると考えていただければよろしいかと存じます。

塩分制限食について教えてください 現在日本の総人口の3分の1にあたる約4300万人が高血圧の基準を超えていると推定されています。高血圧の進行を抑えるためには塩分制限が必要となります。塩分は摂取量が多いほど血圧が高くなるという相関関係が認められています。日本人の場合徐々に減少してはいるものの1日あたりの平均摂取量は約10gで目標とされている6gにはまだまだといったのが現状です。私たちの食事の悪い点は塩分を味付けだけではなく保存料として使用しており、すでに材料の時点で塩分が多く含まれていること、また調味料として塩分そのものだけでなく味噌や醤油といったものにも多く含まれていることです。こうして食事と共に体内に入った塩分はナトリウムイオンの形で細胞内に存在することになりますが、からだは恒常性と言って常にナトリウムイオンを一定の範囲内に保とうとします。そのため塩分を多く撮りすぎると喉がかわき水分を多く吸収しナトリウムイオンの濃度を下げようとする他、腎臓から積極的に排泄させようとします。この際働くのがレニン・アンジオテンシン系というホルモンと交感神経です。これらは血圧を上昇させる方向に作用しますので結果として高血圧が進行していくこととなります。また食塩感受性高血圧と言ってホルモンや神経とは別の経路で血圧が上昇していくことが知られています。そのため塩分摂取を控えることはとても重要なことです。具体的には調味料として塩分の使用を極力避け、酸味や香辛料で置き換えます。旨味調味料もグルタミン酸ナトリウムの名の通り塩分が含まれているので気をつけてください。同様に醤油、味噌も減塩のものに置き換えましょう。ハムやソーセージなどの加工食品も避ける他、外食の回数も減らしたいものです。ただこれからの暑い季節熱中症に対する注意が必要ですが、体内の塩分は汗と共に出てしまうため、足に力が入らないなどの症状が出たら水分と共に塩分補給する事はやむを得ない事と思います。今回は高血圧に伴う塩分制限を書きましたが、機会を改めて慢性腎臓病について述べたいと思います。

トランス脂肪酸について教えてください 戸塚内科小児科医院の瀧川です。最近往診に行くといわゆるパックされたお惣菜を目にすることがよくあります。市販されている加工食品には見た目や食感、日持ちをよくするため様々な人工的に合成された材料が使われていて、その代表的なものにトランス脂肪酸があります。脂肪酸とは脂質の成分で、トランス脂肪酸は自然界にはほとんど存在せず、脂肪酸を加工して作られます。マーガリンなどに多く含まれる他、ショートニングという添加物に多く含まれます。このショートニングというには、ぱりっとした食感を出すために唐揚げやポテトフライなどに多用されています。トランス脂肪酸は心筋梗塞などの動脈硬化による疾患の引き金になるためアメリカでは2018年から使用が禁止される見込みですが、日本では使用の目安が定められているだけで規制されていません。私たちは高齢化や、核家族化の進行により手軽な加工食品を多く食べるようになって、塩分やトランス脂肪酸の個人レベルでの摂取量の調節が難しくなりました。また有害であっても日本では規制が緩いのが現実です。私たちの食事は知らないところで悪い方向に向かっていると考えてください。

漢方と更年期障害について教えてください 戸塚内科小児科医院の瀧川です。更年期障害では漢方薬がよく用いられます。理由は更年期障害の症状が多彩であり、漢方薬は広い範囲の症状をカバーできることと、副作用が少ないという安心感からだと思われます。更年期障害に用いられる漢方薬としては滞った血の流れを改善する当帰芍薬散と桂枝茯苓丸、鎮静作用のある加味逍遥散などがあります。国内で行われたホルモン補充療法との比較試験ではほぼ同等の効果が示されていますが、アメリカで行われた桂枝茯苓丸とプラセボ(偽薬)との比較試験では差が認められず効果なしとされました。漢方薬は長年の経験から編み出された診断方法によって処方されるべきもので、また、効果を確かめるのには8週間から12週間かかります。そのため同じ症状の人でも全ての人に同じ漢方薬が効くということはありません。ただ、長年症状に悩まされてきた方が西洋薬では効果に乏しかったのに対し漢方薬で著しい改善をしたこともあり、その有効性は確かです。したがって副作用が少ないという安心感と全ての人に同じには効かないという点を理解していただければ、長期間内服できる薬として選択肢にいれていいと思います。

起立性調節障害(O D)とはどういう障害でしょうか 起立性調節障害(O D)は以前には起立性低血圧と呼ばれていましたが、体を起こした時の動脈の圧の調節に障害があるのが原因のため起立性調節障害と呼ばれるようになりました。起立性調節障害は思春期と高齢者の二つの年代に多く見られます。動脈は自律神経と内分泌系の2種類の系統から指令により、特に頭部への血液量は常に必要量が保たれるようになっていますが1:自律神経の異常、2:心臓、血管系の異常、3、血液の異常など調節機能に異常が生じると症状が出てきます。具体的には高齢者ではめまい、ふらつき、失神などがあります。特に多いのは水分の摂取量の不足や貧血、動脈硬化による血圧の調節機能の低下です。高齢者の場合、全体の20%に見られると言われており、頭を上げた時に出るふらつきで、転倒、骨折を来たし日常生活に支障をきたすようになる事です。予防法としては貧血や脱水の防止の他に、立ち上がる際はゆっくりと動く事が重要です。一方思春期ではめまい、立ちくらみの他、頭痛や腹痛、朝起きられない、午前中は調子が悪い、倦怠感や食欲不振など高齢者に比べ症状は多彩です。原因は成長に伴う貧血や脱水、睡眠のリズム異常や環境の変化に対する疲労などが重なり合って生じる事が多く一つに特定できる場合はむしろ少ないと言えます。まずてんかんが原因である事を除外します。その上で脱水や貧血に気をつける事はもちろんの事、生活リズムの改善、例えば入眠時間を徐々に前倒しする、朝の倦怠感を引きずって日中まで寝込むような事をせず生活にメリハリをつけるようにするなどが挙げられます。薬物治療では交感神経を刺激するような薬を用いる事もあります。ただよくストレスが原因とする意見を目にしますが一概には断定できません。ストレスにより症状が悪化することはありますが、起立性調節障害はあくまでも身体の異常から生じるものであり、心の問題と捉えると全てを周囲からのストレスによるものとして、解決が遠のいてしまいがちです。まずは生活習慣の見直しからして欲しいと思います。

急性心筋梗塞について教えてください 心臓は筋肉で構成されており、全身や肺へ血液を送り出すポンプとして作用しています。心臓へは冠動脈という3本の動脈で栄養や酸素が供給されていますが、この冠動脈に動脈硬化が生じ、冠動脈の内部に亀裂が生じ血栓(血の塊)ができると冠動脈が塞がれ血流が急激に途絶します。その結果、心臓の筋肉が壊死に陥ることを急性心筋梗塞といいます。不安定狭心症という筋肉へのダメージが少ない場合も、この血栓形成が原因となっているため、両者をあわせて急性冠症候群ともいいます。今回はなぜ血栓ができるのか説明したいと思います。動脈は全身に酸素や栄養を運ぶための血管であり、弾力性に富んでいます。動脈硬化は加齢とともに弾力性が失われていきますが、何十年にもわたり徐々に進行します。ただある条件のもとでは動脈の内側に亀裂が生じることがあります。高血圧のように異常に高い圧力がかかったり、喫煙などの有害物質が流れる、あるいは脂質異常症や糖尿病のように本来なら体内で処理されるべきコレステロールや血糖などが処理能力を超えて異常に高くなる場合です。このような異常な条件のもとでは動脈の一番内側に亀裂が生じやすくなります。亀裂はある瞬間に突然破れ、けがをして出血したときにそれを止めようとするのと同じように冠動脈の中に血栓ができ、その結果冠動脈の血流が途絶えてしまうことになります。ただし、このような亀裂を生じる動脈硬化というのはほとんどが程度の軽い部分にできるため、造影検査により亀裂の生じやすい箇所を特定することは非常に難しいことです。前兆としては胸の締め付けられる感じや左手や左の顎の部分の違和感が生じ、回数や持続時間が増悪することですが、実際には突然発症することもよくあります。治療は緊急心臓カテーテル検査により血栓の部位を同定しステントという筒状の金属のメッシュを挿入することで発症後できるだけ早いことが必要です。しかし一番大事なのは動脈に亀裂を作るような異常な状況を作らない事、すなわち高血圧、脂質異常症、糖尿病のコントロールと禁煙にほかなりません。

狭心症と心筋梗塞について教えてください 心臓は全身に血液を送るポンプとしての役割を担っているため、ほとんど筋肉でできています。心臓を走行している動脈を冠動脈とよび、右冠動脈と左冠動脈前下行枝と左冠動脈回旋枝の3本があり、心臓の筋肉に酸素を供給しています。狭心症と心筋梗塞は冠動脈の動脈硬化が原因となり血流が悪化・途絶することにより生じる病気であり、虚血性心疾患と総称されます。心筋梗塞は冠動脈の血流が途絶することにより心臓の筋肉が壊死に至り、心臓のポンプ機能に障害がでます。狭心症は冠動脈の血流の低下はあったものの途絶するまでには至らず、筋肉が壊死には至らなかった状態をいいます。原因となる動脈硬化はLDLコレステロールすなわち悪玉コレステロールが血液中を流れていると、からだは異物として認識し、除去するため、血管の壁に免疫系の細胞が現れ、LDLコレステロールが取り込まれ、血管の壁が内側に向かって厚くなり、しなやかさが失われ、動脈硬化となります。場所によっては、動脈硬化が柔らかい部分があり、ここに力が加わると血管の内側が破れ、傷をふさぐため血栓ができます。この血栓により冠動脈をふさがれ心筋梗塞を起こします。また血栓が少なく塞ぐまでには至らなかった場合を狭心症でも特に不安定狭心症と呼びます。治療法はいずれも冠動脈の造影検査を行ったのち、ステントとよばれる金属製のメッシュの筒を挿入し傷の部分に押し付け血栓を抑え込みます。また動脈硬化のみで血流が低下し症状が生じるのを安定労作性狭心症とよび、主に内服治療でコントロールします。

更年期に伴う高血圧について 更年期に伴う高血圧は女性ホルモンの分泌(ぶんぴつ)に密接に関連しています。女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがあり、この2種類のホルモンのバランスにより生理が起こります。特にエストロゲンは妊娠に関して非常に重要な働きをします。エストロゲンは30歳代後半より減少し始め、それに伴い生理の周期が変化し、間隔が長くなってきます。12ヶ月間生理が来ないと閉経と判断されますが、日本人の平均は大体49.5歳頃といわれています。もちろん閉経の時期は非常に個人差がありますが、この閉経の時期の前後5年間を更年期と呼びます。更年期障害とはこの時期に発生する自律神経失調や精神的な症状を指します。エストロゲンの主な作用は子宮に働きかけ、子宮内幕を厚くすることですが、その他にも骨密度の維持、皮膚の弾力性の保持、からだの中でおこる炎症を抑える作用、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を低下させる作用などがあり、坑加齢ホルモンとも呼ばれています。更年期に入るとエストロゲンが減少し始めるため、脳よりエストロゲンの分泌を促すようになり、このため自律神経失調が生じます。ひとのからだは交感神経と副交感神経の2種類の自律神経がバランスをとりながら作用しているのですが、そのバランスが乱れると、特に交感神経の働きが過剰になった際に動悸やほてり、血圧の上昇などがおこります。そのため更年期の早期の血圧は本来の血圧と高血圧が交互におこる動揺する高血圧とよばれます。その後急速に動脈硬化が進行していきます。女性と男性の高血圧の違いは、男性が20歳代より徐々に動脈硬化が進行し、高血圧の方が増えていくのに対し、女性の場合、更年期以前はエストロゲンの働きにより、ほとんど高血圧までに至らないで経過し、更年期より血圧が上昇し始め、更年期を過ぎるとほぼ男性と同じ割合で高血圧になるという点です。高血圧に至るまでの時間が短いため、なかなか気がつかないことも多くいのですが、更年期が終わった時点で、男性と同じ動脈硬化の進行が見られるという点が非常に重要です。そして高血圧に対しては女性こそしっかり治療を受けていただきたいと思います。現在女性の平均寿命は86歳に対し、健康でいられる年齢の平均は73歳とされています。また介護が必要となる原因として、第1位が脳血管疾患であり、続いて認知症、筋力の低下などがあります。平均寿命と健康年齢の差の13年間をいかに健康的に過ごすかが非常に重要なことであり、特に原因の第1位である脳血管疾患は高血圧と密接に関連しますので、治療は是非続けていただきたいと思います。

誤解されがちな動脈硬化 いったい「動脈硬化」とはなんでしょう。改めて問われてみると、なんとなくわかっているようで、本当のところはよくわからない、という方が多いのではないでしょうか。誤解も少なくありません。 動脈の変化は、中高年になってから起こるものだと信じている人が多く、これが最も誤解されている点です。 実は、ゼロ歳の時点ですでに主な動脈に「硬化」の初期病変がみられ、10歳前後から急に進んできます。30歳ごろになると、まさに“完成”された「動脈硬化」が現れるようになります。 生まれた時から一生つき合わねばならない血管の変化ですが、変化を起こし、進める「危険因子」を避け、食事、運動などに気をつければ、予防でき、進行を食い止めることもまた可能です。 生活習慣が欧米化したのに伴って、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心臓病が年々増えてきました。こうした病気の原因の大部分は、動脈硬化が進むことによって起こりますから、この変化を抑え、いかに若々しい血管を保つかは、現代人の健康法のイロハのイにあたる大切なことです。 この変化がどうして起こり、どのように進むのか? その「危険因子」は何か? 危険因子と食事療法や運動療法はどう関係するのか? 今回はこうした点を中心に考えてみましょう。 循環器病の患者さんには回復への指針として、危険因子を抱えている方には、それらを一つでも減らし、循環器病を予防するガイドとして役立ててもらえればうれしい限りです。健康な人、若い人にも血管をいたわる健康法として読んでいただければ幸いです。 私たちの体は、血管を通じて血液が糖分や酸素など生活に必要なものを運び込み、その一方で、炭酸ガスや体内でできた老廃物を運び出して処理する仕組みになっています。 動脈も静脈も、基本的には「内膜」「中膜」「外膜」の3つの層からできています。 <図1>をご覧いただくとわかるように、血液と接しているのが「内膜」で、その表面は「内皮細胞」という細胞の層に覆われています。この細胞層は血液から必要な成分だけを取り込むフィルターの役目をしています。 動脈硬化との関係で特に重要なのは「内膜」と「内皮細胞」です。まずこの二つをしっかり覚えてください。 内膜の外側の「中膜」には、血管としてのしなやかな弾力性を保つための成分(平滑筋細胞など)でできた層があります。動脈には、心臓から血液が送り出されるときの圧力がかかりますから、この層は厚くなっています。一方、静脈は圧力の低い血流なので、この層は動脈ほど厚くありません。 中膜の外側を囲んでいるのが「外膜」の層で、ここには血管の外から細い血管を通じて栄養分などが運ばれてきます。 血管が粥のようになって発病 「動脈硬化」とは「動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりして本来の構造が壊れ、働きがわるくなる病変」の総称です。もともと病理学で使う呼び方で、病名ではありません。 病理学では三つのタイプに分けていますが、一般に動脈硬化といえば「粥状動脈硬化」を指す場合が多く、ここではそれを動脈硬化として説明します。 「粥状」とは難しい表現ですが、「おかゆ」か「ヨーグルト」、もしくは「柔らかいチーズ」のような状態を思い浮かべてください。 この血管の変化は、内膜や中膜が比較的よく発育した動脈に起きやすいので、心臓を養う冠状動脈、大動脈、さらに脳、頚部、腎臓、内臓、手足の動脈などによく起こります。 内膜の中にコレステロールが蓄積し、次第に脂肪分が沈着して、血管が狭くなり、血栓、潰瘍をつくる原因になります。これが原因になり、狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤、腎梗塞、手足の壊死などが起こります。 無症状で進行する 「硬化」はどう進むのか、その過程をご説明しましょう。 年齢が高くなるにつれ、内膜の中にたまったコレステロールを中心とした脂肪沈着は、やがて「脂肪斑」と呼ばれる状態になります。20~30歳ごろから始まり、この「脂肪斑」などが大きくなり、血管の内側に向かって盛り上がってきますから、50~60歳になると血管自体は狭くなってしまいます。 その結果、スムーズな流れだった血流と内膜の間に無理(ストレス)が生じ、内膜を覆っている細胞(内皮細胞)が壊れ、血の塊(血栓)ができます。この塊で血管が詰ると、急性心筋梗塞などの発作として、初めて症状が現れるようになります。 ですから、症状が自覚できるようになった時は、すでに20~30年に及ぶ沈黙の「動脈硬化の進行」があったと考えなくてはなりません。硬化は無症状のまま進行することをしっかり覚えておいてください。 硬化はどう進むのか では、動脈の変化はどのように進むのでしょうか。 健康な人の血管の内膜表面を覆っている「内皮細胞」の層は、血液から必要な成分を取り込み、他の成分は入り込まないようにしていることはすでに説明しました。このほかに、血液が固まるのを防いだり、血液が内皮細胞にくっつかないようにしたりする大切な役目も果たしています。 最近になって、内皮細胞の層でさまざまな物質(生理活性物質)がつくられ、放出されていることがわかってきました。この細胞の役割は極めて大きいのです。 <図2>を見てもらいながら、話を進めます。心臓・血管に悪い影響を与える高血圧や糖尿病や感染などが刺激になって内皮細胞が傷害されると、血中の単球(白血球)が内皮細胞にくっつくようになります。さらにこの単球は内皮細胞の間から潜り込み、「マクロファージ」と呼ばれる状態に変身します。 血液中のコレステロールが多すぎると、この「マクロファージ」が“呼び寄せ役”になって、脂肪物質がどんどん取り込まれてたまり、内膜が厚くなってきます。時間の経過とともにこの“呼び寄せ役”自体も壊れて、先に説明したように「粥状」になります。 少し難しい説明になりましたが、「高血圧や糖尿病などが刺激になって内皮細胞が傷つけられると、その部分の血管壁の中に脂肪物質がたまって厚くなり、“おかゆ”のような状態になる」と覚えていただければ結構です。 血管の仕組みとはたらき 血管は、血液を心臓から全身に届ける「動脈」、全身の血液を心臓に戻す「静脈」、体の末端まで栄養を届ける「毛細血管」で構成されています。 このうち、動脈、静脈は、外側から「外膜」「中膜」「内膜」という構造になっています。動脈の壁は静脈に比べてぶ厚くなっていて、ゴム管のように伸び縮みすることで心臓の拍動に伴う圧力に耐えられるようにできています。血管の内側は内皮細胞と呼ばれる細胞に覆われており、血液中の物質の出入りや血管の拡張、血栓の形成など、さまざまなはたらきに関与しています。こうした組織がうまくはたらくことで、血液が全身にスムーズに流れるようになっているのです。 動脈硬化はどのようにして起きる? では、動脈硬化はどのようにして起きるのでしょうか? 一般には、下記のように始めに内皮細胞に何らかの原因で傷がつき、それによって生じる炎症反応で起きると考えられています。

高血圧の食事について気を付けることを教えてください 高血圧の方の食事について気を付けなければならない点はおおまかに2点あるといってよいと思います。一つは適切な体重の維持のための総摂取カロリーの制限と、もう一つは塩分の制限です。肥満にならない、つまり標準体重を維持することは高血圧の方にとってとても大切なことです。肥満というのは余分な脂肪がつく、つまり脂肪細胞が増えるということです。この余分な脂肪細胞ですが、この細胞にも血管がいき、血液が流れます。心臓にとってみれば血液の配達先が増えることになるため負担がかかり、高血圧が悪化することになります。他にも肥満ということは摂取カロリーが多いということですから、その分塩分の摂取も増加し、さらに高血圧に悪影響を及ぼします。また有酸素運動をしている方も多いと思いますが、これは筋肉の維持や動脈硬化の進展の予防には効果がありますが消費カロリーは少ないので、減量はあくまでもカロリー制限で行って下さい。塩分に関しては、塩分を控えているという方でも摂取量が多いことが大半ですので、徹底的に行って下さい。塩分というのは必ず水分と一緒になって移動します。例えば食事に含まれる塩分は必ず食事の中に含まれている水分と一緒に吸収され、そのあと血液となって血管を巡ります。つまり塩分が多いということはその分血液の量が多くなるわけで、血管という決まった容積の中に多量の血液が流れることがすなわち高血圧ということです。具体的にはお味噌汁は1日1杯まで、魚の干物やラーメン、うどん、そばなどは1週間に1つまでに制限します。また野菜の煮物も塩分を吸い込みやすいので控える必要があります。晩酌に関しては1日あたりエチルアルコール換算で20グラムまで、ビール、発泡酒ですと500ml缶1本まで、日本酒ですと1合まで、焼酎ですと0.5合まで、ワインですと180mlまでとなります。

高血圧治療の開始について 瀬谷区の戸塚内科小児科医院の瀧川です。今回のご質問は高血圧の降圧剤による治療の開始に関することですので、実際に高血圧と診断された場合どういうプロセスを経て治療するかをお話しします。具体的には以下の4つの項目をチェックし評価して降圧剤による治療を開始します。第一は生活習慣の改善です。大きく分けて食事内容、運動、節酒・禁煙の4項目を改善していきます。食事内容では塩分制限が最も重要であり、1日の摂取量は6グラム未満になるようにします。運動は1日30分以上を目安とし、肥満の傾向がある人は減量もあわせて行ってください。禁煙はもちろんですが、アルコールの摂取量も控えめにしてください。生活習慣の改善は、永続して続けていく必要があります。第二は高血圧の重症度の評価です。診察室で測定した場合140-159/90-99mmHgをⅠ度高血圧、160-179/100-109mmHgをⅡ度高血圧、180以上/110以上をⅢ度高血圧と分類し程度に応じて治療の緊急性を決めます。これ以外にも年齢が65歳以上、糖尿病、喫煙、肥満および近親者に若年で心臓病を患った人がいるかどうかで、重症度は上がっていきます。第三に治療開始時、すでに内蔵に障害があった場合はより厳重に血圧管理が必要ですので、その評価行います。具体的には脳、腎臓、心臓、眼底、頸動脈の動脈硬化などがないかをチェックします。第四に明らかな原因があって高血圧となる二次性高血圧であるかどうかをチェックします。最も多いのが腎機能の低下による高血圧です。この他、腎臓にいく動脈が狭くなり高血圧となる腎血管性高血圧、アルドステロン症や副腎褐色細胞腫のようなホルモンの異常な分泌により高血圧となる場合がありますが、この3つは外科手術で改善が見込まれるため早期にチェックする必要があります。以上4つのステップに従い、評価、チェックし改めるべきは改めて頂いた上で、適切な降圧剤を選択し治療を開始するため、すぐに正常にまでとはなかなか達しないかもしれません。ただ最近アメリカで発表された論文ではマイルドではなく積極的に高血圧を正常化する事が推奨されていた事を最後に付け加えておきます。

自律神経失調症について教えてください 戸塚内科小児科医院の瀧川です。最近更年期障害についていくつかお問い合わせがありました。更年期障害について詳しくは別に述べたいとお思いますが、症状で最も早く出現するのは自律神経失調と精神的な症状です。自律神経失調の症状としては動悸、めまい、立ちくらみなどが代表的ですが、これは自立神経(交感神経と迷走神経)のバランスが乱れて生じます。ただこの自律神経失調症というのは正式な病名ではなく便宜上の病名であり、正確には身体表現性障害、つまりストレスなどによってからだに何らかの症状が生じる病気というのが最も近い病名といえます。自律神経失調の場合には原因となるストレスからの影響を和らげるために抗不安薬(安定剤)内服が第一選択となります。ただ例えば立ちくらみの場合、これは迷走神経の過剰によるものですが、抗不安薬を内服していると逆に症状が悪化する可能性があります。

痛み止めについて 戸塚内科小児科医院のです。最近ロキソプロフェンというとても一般的に使われている痛み止めに対し重大な副作用が追加されましたが報告数は非常に少なくまず心配しなくてもいいと思います。アセトアミノフェンを除いたロキソプロフェンなどの大部分の痛み止めは非ステロイド性消炎鎮痛剤に分類されます。これらの薬は炎症が起きている部分に作用して炎症を抑えることにより痛みを静めます。この非ステロイド性消炎鎮痛剤に最もよく見られる副作用は胃潰瘍で、胃を胃酸から守っている防御因子の邪魔をすることで、いとも簡単に胃潰瘍をおこします。また腎臓の機能を悪化させることも知られています。このように痛み止めは重大な副作用を持っているために使用は極力減らしたいのですが腰痛や頭痛のような慢性的な痛みには痛み止めに対する依存が見られます。そのため補助的な薬、たとえば頭痛に対しては抗てんかん薬や筋肉の緊張を和らげる薬を、また腰痛に対しては抗うつ剤を、神経痛にはブレガバリンという薬を用います。これらは完全に痛み止めに替わるものではありませんが、使用頻度を減少させますので是非考えてみてください。

動脈硬化と加工食品について教えてください 動脈硬化はLDL(悪玉)コレステロールのうち、特に酸化した(錆びた)悪玉コレステロールが動脈硬化を進行させます。ただし健康なひとの血液にも少量含まれています。少量で血管の中で処理できている間はいいのですが、多くなると体に有害な物質だと免疫系が認識し積極的に血液の中から取り除こうとします。これが動脈硬化の主な原因です。この排除しようとする反応を炎症とよび、動脈硬化にいたる過程を含めて免疫反応といいます。動脈硬化とは血液の中にある錆びた悪玉コレステロールを有害物質と認識し徹底的に排除しようとする持続する炎症反応の結果生じるもので、いったん始まると終わりになる事はありません。ですから動脈硬化を元に戻すという事はできず、進行する速さを遅らせるのが精いっぱいです。この錆びた悪玉コレステロールは油で揚げた食品を再加熱すると増えるといわれています。これこそ加工食品です。日本人の食事は欧米人より健康的だといわれますが、生活に入り込んでいる加工食品のことを考えればそれは大きな過ちです。

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※平日は19:00まで診療 ※土曜のみ17:00まで

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連携病院

・聖マリアンナ医科大学西部病院

・横浜旭中央総合病院

・横浜市立みなと赤十字病院

・国立病院機構横浜医療センター

・横浜ほうゆう病院

戸塚内科小児科医院_瀬谷

住所

電話

診療内容

​アクセス

〒246-0031

神奈川県横浜市瀬谷区瀬谷5-14-10

ハイム芝本101

045-301-0171

内科、循環器内科、小児科

瀬谷駅南口より徒歩3分

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